山の斜面でヤギと暮らす。


- インタビュー
- 定岡隆典さん
- 1980年生まれ。岡山県新見市出身。
- ヤギを飼い始めて8年。
- さーちゃんミニヤギ牧場 牧場長
住宅街を抜けて山道を進む。
カーブを12回曲がると視界がひらけていくつかの屋根と畑が見える。
山の木々の間にぽっかりと広がる畑を見下ろしながら進むと
さーちゃんミニヤギ牧場が見えてくる。
ヤギのエサ。これを持っていくとヤギにモテるが、モテすぎに注意!
カフェとエサ売り場の前を通過して階段を降りる。
近づくにつれ徐々に大きくなる 「メエエエエ」と「コケコッコー」のハーモニーと
隠れ家的と呼ぶにふさわしい景色が飛び込んでくる。
木々に囲まれた牧場。今年生まれたばかりの子ヤギたちが元気に駆け回っていた。
牧場に向かって、「こんにちはー!」と声をかけると
頭にタオルを巻いた人物が眩しそうな表情で 「いらっしゃい。」とヤギと共にゆっくりと現れた。
彼こそが、さーちゃん兄さんこと定岡隆典さんだ。
「最初は、畑の除草のためだったんです。」
使われなくなった畑の草刈りを親から頼まれたものの、
それまで草刈りなどしたことがなかった。 当然、草刈り機を使ったこともない。
ジャングルのように草が伸びた畑を目の前にして、何か良い方法はないものかと考え込んだ。
そしてある日、ヤギに食べてもらえば良いのではと思いついた。
そこからはトントン拍子に事が進み、 知り合いを通じて1匹のヤギが定岡家にやってきた。
そのヤギが妊娠しており、2匹、3匹と数が増えていった。
最初はペットのように考えていたため、庭で飼っていたのだという。
しかし、そのまま飼っているだけではもったいない、とヤギ仲間からのアドバイス受け 牧場を始めてみることに。
きっかけは、そんな、ほんのささいな思いつきだったそうだ。
元々、畜産や酪農を学んでいた訳でもなく、専門的な知識はなかった。
「勉強は独学です。本を読んだり知り合いに聞いたり、、、 やっていくうちにわかることも多く、日々勉強です。」
定岡さんの勉強は今日も明日も続いていく。
「自分には、すごくあっている仕事だと思う。」
生き物が相手の仕事は、年中無休だ。
「朝は早いし休めない。旅行なんて行けないなあ。」と言いながら 「それでも楽しい。」と定岡さんは笑う。
命を扱う仕事は、悲しい場面と向き合うことにもなる。
そんな中で、新しい命が生まれるのはやはり何事にも代えがたい嬉しさだという。
また、掛け合わせがうまくいったとき(※)には、思わず拳を握り締めるそうだ。
※ 垂れ耳の雄とミニヤギの雌から産まれた子どもに、垂れ耳のミニヤギという特徴が表れた、 と言った具合にイメージ通りに形質が表れたときのこと。
メスヤギたちの小屋。知り合いの大工さんに作ってもらったのだそうだ。ヤギの数が増えて狭くなってきたので増築の計画中。
この牧場のヤギたちは、とてもひとなつっこく好奇心が旺盛だ。
人が牧場に入ると数匹が寄ってくる。
ジャンバーの裾や靴のひもは、すかさずハムハムと口の中へ。
気になるものは、とりあえず口に入れて確かめているのだという。
逃げたり、人間を怖がって威嚇する様子はなく
撫でても嫌がられることはなかった。
それはきっと、愛情をたっぷりと受けて育ったから。
ヤギには一頭一頭名前があり、定岡さんが名前を呼ぶと来る。
名前をたずねると、「あの子は 〜で、あの子は、、、」と話す定岡さんからは、
ヤギたちへの愛情がにじみ出ていた。
さーちゃん兄さんとメープルちゃん。彼らの信頼関係は厚い。
2011年からはウコッケイも加わり、牧場はさらに賑やかに。
ふわっふわの可愛らしい見た目とは裏腹に、雄鶏はけたたましく朝を知らせてくれる。
ヤギたちに負けじと、これでもかというくらい声を張っている。
鶏舎の中。触り心地バツグンのふわふわたち。ウコッケイは一羽が年間60前後しか卵を産まないのだそうだ。
卵を取ろうとすると彼らは怒るそうで、卵の収穫は必死の作業。
カフェではそんな貴重な卵かけ御飯が味わえる。(要予約)
卵かけご飯に汁物と季節の食材を使ったおかずがついて、なんと500円。他にも、ウコッケイの卵を使ったシフォンケーキやプリンといったスイーツも味うことができる。
この季節は忙しいようだ。
ヤギたちのベビーラッシュや畑の準備、
そして今年は養蜂を始めるべく、ミツバチの巣枠と巣箱作り勤しんでいる。
今後はカフェをパワーアップするそう。
自家製のヤギミルクとハチミツを使ったスイーツを増やし、
カフェを見晴らしの良い位置に移動させる予定だ。
ぴったり。夕方になると、ごはんを急かすかのように小屋の周りに皆が集まってくる。
さーちゃん兄さんとヤギたちのコンビネーションは必見。
ぜひ一度、牧場に遊びに行ってみてください。
きっと、「いらっしゃい」と眩しそうな笑顔で迎えてくれます。
牧場 9:00~16:00(年中無休)
080-4264-2797
カフェ 10:00~16:00(不定休)
090-4657-8186
http://www.sa-chanstockfarm.com/
牧場の入場は無料。
天候不良の場合は放牧していません。